保育園の先生とのお別れ

愛情に溢れた先生

4月は出会いと別れの季節ですね。

私には保育園に通う子供がいますが、このたび1つ進級するとともに、今まで担任として子供を見てくれていた先生が異動になりました。

その先生は、愛情に溢れた素晴らしい方で、こんなに素晴らしい先生には二度と出会えないかもしれないと思うほどでした。

保育園の先生は、幼稚園の先生とは違い、親に代わって小さな子供を預かる立場なので、”教え導く”というよりは”育む”という側面が強いです。

その先生は、子供たちを”育む”だけでなく、”愛を持って接する”ことをされてきた方でした。

日々報道される、虐待などの悲しいニュース。

虐待には至らなくとも、仕事で大きなストレスにさらされ、子供に優しく接することができない親の気持ち。そしてそんな状態の自分を責めてしまう親の気持ち。そして親に冷たくあしらわれた子供の寂しい気持ち。

先生は親と子供、両者の気持ちをすべて分かっているようでした。先生はいつも、目の前にいる子供を通して親たちをも見てきたのだろう。どう子供たちに接すれば、子供と親の両方に働きかけて、子供たちに良い未来をプレゼントしてあげられるのかを、考えてこられた方なのだろうなと感じました。

愛のこもったおくりもの

その先生は、クラス担任を終えるにあたり、子供たちに素晴らしいプレゼントを用意してくれました。

一人ひとりに向けて、写真と作品を綴じた手作りのアルバムをくれたのです。
アルバムにはリボンが掛けてあり、子供が喜ぶ仕掛けがたくさんしてありました。

表紙は窓のようになっていて、開けると子供のとびきりの笑顔の写真が出てきます。続きのページには、子供の手形や作った作品が可愛らしくレイアウトされていました。また、所々に「◯◯ちゃん、だいすきだよ」、「◯◯ちゃんにであえてうれしかったよ」というメッセージまで。

それらは、先生のお昼休みの時間だけでは絶対に作れなかっただろうなという完成度でした。

先生は家で子供たちの顔を思い浮かべながら、一人ひとりに心のこもったメッセージを書いてくれたのでしょう。

そして、最終日に挨拶したときの、先生の気丈でいて寂しさをまとったような笑顔。別れ際に子供を神妙な顔持ちでぎゅーっと抱きしめてくれたこと。

先生の愛の深さを思うと、涙が止まりませんでした。

先生のプレゼントが教えてくれたこと

先生の愛のこもったプレゼントを見て、私自分も大きく学ぶ部分がありました。
私は数年ほどIT関係の仕事をしてきたのですが、パソコンや新しいツールが上手く使えるようになると「自分が偉くなった」とか、「仕事が出来るようになった」などと思い込んでしまう場面がありました。

でも、それは大きな誤りでした。

その先生は、パソコンなど使わずハサミとペンとのりだけで、人に大きな感動を与えるほどの作品を作り、「愛を伝える」ことを軽々と成し遂げていたのです。

「すごいツールを使わないと大きな仕事はできない」とか、「パソコンが上手に使えるから人より優れている」とか、自分が無意識のうちに思い込んでいた大きな勘違いを、この出来事によって教えられました。

ポピーの花

新学期になって数日後、家の前にポピーの花が一輪咲きました。

アスファルトと壁のほんの隙間に種が落ちたのでしょうか。

たった一輪だけ、しかも家の窓から綺麗に見える位置に可愛らしいオレンジの花が咲きました。私の大好きなポピーの花でした。

先生の愛が、子供たちの心に愛の種を撒き、そのポピーまで育んでくれたように思えました。

子供は、先生とのお別れをまだ自覚できていないようで、「◯◯先生にあげる」と言って、その花を摘みました。

普段、「先生にあげる」という台詞を一度も聞いたことがなかったのですが、そのたった一輪のポピーをあげると言うのです。

大きな感動と、悲しみを感じながら「◯◯先生にはもう会えないんだよ。◯◯保育園に行っちゃったからね。」と子供に伝えました。

子供は分かったのか分からなかったのか、「じゃあ、じーじにあげる」と言って歩き出しました。

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